海外安全対策情報(平成27年10月~12月)

【1.治安情勢概説】

(1)   最近の動向

マレーシア国内では、11月下旬にクアラルンプール市内で開催されたASEAN首脳会合の機会をとらえ、治安当局と軍によるテロ攻撃に対する厳しい警戒が敷かれました。 また、最近の報道によれば、治安当局は12月初旬に「複数のISIL戦闘員がロシア権益等への攻撃を企図してタイへ入国した」との情報を入手したのを受け、マレーシア国内の欧米権益に対する警戒強化を開始し、現在も継続中とのことです。

ちなみに、在留邦人及び短期滞在者が遭遇した事案としては、在留邦人に対するひったくり事件(クアラルンプール日本人会の直近で発生)や、邦人旅行者に対するすりや置き引き事件(KLCCなどの観光スポットやホテルのロビー等で発生)などが断続的に発生しています。

 

(2)   犯罪認知件数と犯罪発生傾向

マレーシア国内における2014年中の犯罪発生認知件数(除く知能犯罪、薬物犯罪等)は、128,544件で、前年比マイナス18,518件と大幅に減少し、殺人事件の発生件数も510件と前年比117件の減少となりました。しかし、犯罪発生率を日本と比べると当地の犯罪発生率は、日本の約2倍となります。特に、強盗事件の発生率は日本の約23倍と、身体や生命の安全を脅かしかねない犯罪が、日本より遙かに高い割合で発生していることに注意する必要があります。

 

(3)   テロ情勢

中東や欧米で発生している銃乱射事件や爆弾テロ事件などの事案は、当地ではこれまでところ発生していません。しかし、治安当局がこれまで逮捕したテロ 関連被疑者に対する捜査等を通じて、クアラルンプール市内などの人が多数集まる場所でのテロ攻撃が計画されていたことが判明しています。

従って、皆様におかれては「テロ事件の脅威が身近に存在する」こと、また、「いつ、どこで、どのようなテロ事件が発生するか予測できない」こ とを認識し、日頃から必要な注意を払いながら行動することが求められています。

 

(4)   邦人の皆様へのお願い

在留邦人及び邦人旅行者の皆様におかれては、外国では言語、法制度、警察組織や犯罪捜査手続など、あらゆる事象が日本と異なること、また、万が一犯罪に巻き込まれた場合でも、日本の警察が行うようなきめの細かい対応は期待できないことをよく理解する必要があります。

その上で、まずは、「犯罪に巻き込まれない」ように注意し、万一、犯罪に巻き込まれた場合でも、「身体の安全を第一に行動する」ことを肝に銘じ、必要な防犯対策を進める必要があります。

また、空港や駅などの交通の要所や外国人観光客が多数集まる名所・旧跡、大規模商業施設では、外国人観光客を狙った銃乱射事件や爆弾テロ事件が発生し、被害に遭遇する可能性が十分あることも念頭に置いて行動する必要があります。

 

【2.一般犯罪・凶悪犯罪の事例・手口】

ひったくり、置き引き、車上狙いなどの窃盗被害は、在留者や旅行者を問わず発生しています。10月以降に大使館に報告等寄せられた事案は、次のとおりです。

 

ア 置き引き(団体ツアーへ参加中の旅行者がセカンドバッグを盗難)

10月初旬(平日)午後、クアラルンプール市内中心部ホテルのティールームで、邦人旅行者がテーブル脇にセカンドバッグを置いていたところ、いつの間にか盗まれました。被害当時、ティールームはホテル関係者等多数の人間が出入りしていましたが、被害者は会話に夢中になり、荷物への注意がおろそかになってしまったということです。

 

イ 持凶器強盗(日本人会直近で鞄を強奪されそうになり抵抗したところ金槌で殴打)

11月中旬午後2時頃、クアラルンプール市内中心部のショッピングモール(ミッドバレーメガモール)からクアラルンプール日本人会へ、友人たちと徒歩で移 動していた在留邦人が、後方から追尾してきた男性に鞄を奪われそうになり、抵抗したところ、金槌で頭部や上碗部を殴打され入院を余儀なくされました。同日本人会施設の周辺は、以前から日本人を狙ったひったくり・強盗事案が頻発していたことから、警備員の警戒配置やパトカーによるランダム警ら等の対策を進めていましたが、犯人は犯行後ミニバイクに二人乗りして現場から逃走しました。

 

ウ 集団強盗(深夜外出時に集団で暴行の上鞄を強奪)

10月10日午前0時頃、ジョホール市内で在留邦人が夜食を買いに出かけたところ、数人の若者に囲まれて殴るけるなどの暴行を受けた上、携行していた鞄を奪われました。

被害者は、直前に犯人達が被害者の方を窺いながら追尾する気配を感じたため、不安になったそうですが、「まさか自分が事件の被害者になることはないだろう」と考えて歩き続けた結果、被害に遭ったということです。

 

 

エ 紙幣の抜き取り(口実を設けて紙幣を取り出させた上で窃取)

11月以降、クアラルンプール市内の複数のショッピングモールで、「日本へ旅行に行くので、高額紙幣を見せて欲しい」等の口実で日本人に近づ き、日本やマレーシアの紙幣を抜き取ろうとする事案が複数報告されています。犯人は、上記の口実の他、「マレーシアに来たばかりで紙幣の種類がよく分からないので見せて欲しい」といったものもあるということで、いずれの事案でも様々な口実を設けて財布又は紙幣を預かり、隙を見て紙幣の一部を抜き取ろうとしています。

 

オ 国際送金詐欺(いわゆる「ロマンス」詐欺など)

国内外の「国際交流サイト」等で知り合った外国人にそそのかされ、マレーシアやその他の国々へ国際送金してしまう事案が多数発生しています。典型的な犯罪例は、架空の異性(男性の場合、欧米系白人で企業コンサルタント、米国軍人、バンカー等を名乗る事が多い)を名乗り、上述したサイト等で 被害者を探して架空のプロフィールに基づくメールを

送り付け、数週間から2,3か月程度親しくメールを交換して被害者の信用を獲得した上で様々な口実で数 十万円程度

の送金を依頼します。被害者が応じると連絡を取らなくなる、あるいは返金に応じないというものです。

この種の犯行は、いわゆる「振り込め詐欺」と同様に組織的に行われており、相手方の他に税関職員や宅配業者等、

巧妙に役割を分担して送金を促しています。 また、一度送金すると更に高額の送金を要求することもあるため、

「金銭の貸借や建て替えを依頼するようなメールが届いたら、ただちに連絡を絶つといった厳しい態度で臨み、

金銭の無心には一切応じないことが肝要です。

 

カ インターネット・オークション詐欺

日本国内でネットショップやインターネット・オークションサイトに出品している邦人が、品物を騙し取られる詐欺で、多くの場合、スマートフォンやデジタル カメラなどの電子機器、貴金属類など容易に換金できるものを狙っています。多くの手口では、犯人側は、高額な金額を提示して被害者との直接取引を持ち掛ける、あるいは海外の銀行を偽装した送金受付の文書や電子メールで被害者へ送金したと誤信させ、品物を送らせようとします。

多くの場合、犯人はEMS(国際スピード郵便)で被害品をマレーシアへ送るよう要求し、EMSの配達状況追跡サービスを悪用して郵便局到着を見計らい、被害品を窓口で直接受け取り逃走している模様です。

この配送先住所には居住事実がなく、受取時に提示する身分証明書も偽造身分証で人定が判明できないようにしていることがほとんどです。したがって、海外との取引に際し、殊更にオークションサイトを通さない直接取引を要求される、銀行口座への入金確認前にも関わらず、あれこれ理由を付けて 「直ちに送って欲しい」等の依頼をうける場合は、ただちに取引を中止するとともに、「これ以上取引を継続する意思はない、必要等あれば警察に相談する」な どと相手方に伝え、これ以上の連絡を断念させて被害を未然に防ぐ必要があります。

 

 

【3.テロ・爆弾事件発生状況】

【テロ情勢】

冒頭でも触れたとおり、当地の治安当局は、11月から12月にかけてテロ攻撃に対する警戒を強化しており、テロ関係者の検挙が頻繁に報じられ ています。中でも、ISIL関係者の摘発については、当館でも9月25日にクアラルンプール市内のテロの脅威に関するスポット情報を発出したほか、10月 5日には外務省海外安全ホームページにバングラデシュで発生した邦人殺害事件の発生に伴う注意喚起を発出しています。

マレーシア国家警察は、テロ対策の一環としてISIL関係者の摘発を強力に進めておりますが、被逮捕者の中に一般市民

が含まれるなど、その支持者の裾野は広がっていると言わざるを得ない状況にあります。

本年4月には2度の摘発により30人近くの関係者が逮捕されました。また、6月にはマレーシア国内でISILへの勧誘を行っていたとされる北アフリカ出身の男性が検挙されています。

ISILを巡っては、既に70人を越えるマレーシア人が、イラク及びシリアに渡航しての活動に参加していると伝えられているほか、複数の戦闘経験者がマレーシアに帰還しているとみられています。 このように、マレーシア国内各地にはテロを企図する個人及び組織が存在することが判明しており、今後とも十分な警戒が必要です。

 また、マレーシアには欧米系資本のホテルや飲食店が多数進出しているほか、特にクアラルンプール市内ではショッピング

モールやナイトクラブ等、欧米はもとより世界各国からの観光客が多数訪れる施設が多数存在します。

 このことから、万一、外国人観光客を狙ったテロ事件が発生した場合には、在留邦人や邦人旅行者も被害に巻き込まれる

可能性が高いと言えます。

 なお、2013年2月以降、テロ関連容疑でマレーシア国家警察に逮捕された者の人数は、140人以上に上ります

(12月末現在)。

【武装勢力の侵入事案(東マレーシア・サバ州)】

在コタキナバル領事事務所管轄のサバ州南東部ラハ・ダトゥ地区周辺では、2013年2月に数百人規模の武装勢力

「スールー王国軍」がフィリピン側から侵入し、鎮圧に数か月を要したという事案が発生しました。

翌2014年6月には、当該勢力と関係を持つとされる者が複数逮捕されており、当該地区には同勢力を支援する者が

未だ潜伏している可能性が高いとされています。9月末現在、当該地区に対しては、海外安全情報(旧渡航情報)における危険情報のカテゴリー(4段階)のうち、レベル4(退避勧告)に準じる「レベル3:渡航は止めてください(渡航中止勧告)」を継続発出中です。

 

【4.誘拐・脅迫事件発生状況】

【誘拐事件~サバ州東海岸部における誘拐事件の発生動向】

在コタキナバル領事事務所管轄のサバ州東海岸部においては、かねてから身代金目的の拉致・誘拐事件が頻発しており、 2014年4月以降、5件の誘拐事件が発生しています。なお、本年5月に発生した事件については、11月8日にオーナーが解放されたものの、外国人客については同月17日に殺害されています。

 

      ・2014年4月 センポルナ近海(シンガマタ島)外国人旅行者1名、比人従業員1名

      ・2014年5月 ラハ・ダトゥ近海(バイキ島)養魚場マネージャー1名

      ・2014年6月 クナ近郊(サバン村沿岸)養魚場オーナー1名、比人従業員1名

      ・2014年7月 センポルナ近海(マブール島)海上警察官2名(内1名射殺)

・2015年5月 サンダカン海岸 レストランオーナー1人、外国人客1人

 

各事件には、フィリピン南部に拠点を置く武装集団が関与しているとされ、リゾート施設や養魚場など海に面した場所で被害者を拉致し、高速ボートでフィリピン南部の島へ連れ去っているということです。本事案を巡っては、「犯人の一部が逮捕された」等の報道もされていますが、リーダーの逮捕や武装集団の解明など犯行グループを壊滅するには至っていません。

これら一連の誘拐事件を受け、サバ州東海域では、2014年7月から夜間航行禁止令が継続して発出されており、禁止時間帯に許可なく同海域を通行する船舶 は警察により逮捕された上、罰金又は勾留が課されています。

なお、上述のとおり当該地区については、12月末現在、海外安全情報の危険情報カテゴリー3「渡航は止めてください渡航中止勧告)」を継続発出中です。

脅迫事件

地元紙の報道等によりますと、ビジネス絡みのトラブルから脅迫事件に発展してしまう事案がしばしば発生しているということです。脅迫事件の場合、いわゆるギャングやマフィアが関係する事案が少なくないことから、まずは「他人から妬みを買わない」、「事件に巻きこまれない」ことを念頭に無用のトラブルを避ける事が賢明です。

 

【5. 対日感情】

 全体的に良好ですが、10月初旬、第二次世界大戦終結70周年をとらえて国内の中華系マレーシア人の団体が大使館を訪ねて文書を手渡そうとする事案が発生しました。

 よって、太平洋戦争勃発や各種戦役等の記念日や、いわゆる南京事件や従軍慰安婦をめぐる報道が行われた際には、これらの記念日・報道等をとらえて各種示威活動を展開する可能性があることを念頭に置く必要があります。

 

【6. 日本企業の安全に関する諸問題】

邦人及び現地社員に対する犯罪被害防止対策とともに、他国企業で警備員や社内の者が手引きしたと思われる窃盗事案が発生していることに鑑み、社員及び警備員に関する採用人事や勤務管理等には、特に注意を払う必要があります。

 

●犯罪情報につきましては、在マレーシア日本国大使館のホームページにも掲載されておりますので

是非一度ご確認ください。

http://www.my.emb-japan.go.jp/

 

●ジョホール日本人会としましては、今後とも地域の安全に関する情報の発信、共有化に努めて

参ります。会員皆様からの安全情報のご提供をお待ちしておりますので、身近な事件・事故など

ありましたら、何卒事務局までご連絡頂きます様、よろしくお願い致します。

                              以上